市立川西病院について

輸血と特定生物由来製品の使用に関する説明書

当院で使用される特定生物由来製品には大きく分けて、①輸血療法に使用される輸血用血液製剤と、②不特定多数人から採取された血漿から必要なもののみを抽出、濃縮された血漿分画製剤(狭義の特定生物由来製品)があります。

輸血用血液製剤

出血や治療に伴う貧血に対して赤血球を補う目的で使用される赤血球製剤で、濃厚赤血球(RCC)、洗浄赤血球、解凍赤血球濃厚液、白血球除去赤血球などがあり、目的に合わせて使用します。赤血球が減ることによる酸素運搬能の低下を防ぎ心臓や肺への負担を軽減する効果があります。同様に血小板減少に対して使用されるのが血小板製剤であり、濃厚血小板(PC)、濃厚血小板HLAがあります。血小板の低下に伴う出血に対する止血と出血予防のために使用されます。手術や化学療法などに伴う血液中の血を固める働きをするタンパク質(凝固因子)の低下の際に出血傾向を予防するために使用されるのが新鮮凍結血漿(FFP)です。これは、血液中の有害な物質を除去するための血漿交換時にも使用されます。

特定生物由来製品(血漿分画製剤)

血漿から必要なもののみを抽出、濃縮された製剤です。アルブミン、グロブリン、各凝固因子などを補う目的で使用します。特殊なものとして手術時に組織中の接着に使用するフィブリン糊もこれに含まれます。

1.可能性のある副作用

副作用については製剤によって異なり、必ずしも以下のすべてが起こるわけではありません。また、頻度も比較的起こりやすいものから、非常に稀にしか起こらないものまであります。

(1) 感染症

輸血用血液製剤においてはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、AIDSウイルスなどのウイルスや細菌等が感染する可能があります。特にウイルス感染に関しては、ドナーが感染してからしばらくの間はウイルス感染を検出することができないため(ウインドウピリオド)、感染している血液を完全に除去できません。最近では核酸増幅検査(NAT検査)によって高感度にウイルスを検出できるようになりましたが、それでもウインドウピリオドはなくなりません。B型肝炎で1万~10万分の1、C型肝炎で10万~20万分の1、AIDSで200万~400万分の1程度の頻度で感染の危険があるとされています。必要に応じこれらのウイルス等について輸血前後の感染症検査を行います。またこれ以外に今後、未知のウイルスの出現が判明してくるかも知れません。

血漿分画製剤については近年製造過程においてウイルスの不活化や除去を行うため感染のリスクは非常に低いと考えられます。しかし、未知のウイルス等この課程で除去し得ない病原体が出現して来る可能性もあります。特に血漿分画製剤については、原料血漿を海外(アメリカやヨーロッパ)より輸入しているものもあり、日本国内では認められないような病原体が混入する可能性もないとは言えません。

(2) アレルギー反応

輸血用血液製剤及び血漿分画製剤内に含まれる血漿蛋白に対する反応が原因となり、発熱、蕁麻疹、アナフィラキシーショック等を引き起こすものです。頻度は0.5~1%程度です。濃厚血小板や新鮮凍結血漿輸血時に起こることが多いとされています。アナフィラキシーショック等重症のアレルギー反応を起す原因として受血者側にある種の蛋白質の欠損等の原因があることがあります。

(3) 輸血後移植片対宿主病(TA-GVHD)

赤血球製剤や血小板製剤においてはその中に微量ですが供血者のリンパ球が混入します。通常このリンパ球は受血者側の免疫力によりすみやかに除去されます。しかし、大きな手術や放射線・化学療法によって、または疾患自身が原因となって免疫機能が十分に働かなかったり、供血者と受血者の白血球タイプ(HLA)が類似していたりすると、侵入して来た供血者のリンパ球を排除できず、逆に供血者のリンパ球の攻撃を受ける場合があります。様々な臓器の障害を来し、致死率の高い合併症で、5万~50万分の1の頻度で起こるとされていました。特に近親者から供血された場合HLAが類似している可能性が高いため、輸血後GVHDのリスクは上がると考えられます。最近ではすべての赤血球製剤・血小板製剤に放射線照射を行い、リンパ球を殺すことによりほぼ確実に予防できるとされています。照射血使用の普及により2000年以降国内では新たなTA-GVHDの発生の報告はありません。

(4)溶血性副作用

赤血球を含んだ輸血用血液製剤において、その赤血球が破壊されること(溶血)により臓器障害を来す可能性があります。輸血後24時間以内に起こる急性のものと24時間以上時に1ヶ月ぐらいたってから起きる遅延性のものがあります。急性溶血反応は多くはABO型の不一致によって起こり、ショック、胸部圧迫感、血圧低下、発熱等の症状が出現し、腎臓等の主要臓器の障害を来します。遅延型溶血反応は赤血球に存在するその他の型に対する抗体(不規則抗体)を受血者が低力価で保有している場合起こる可能性があり、黄疸、貧血等の症状が出現しますが、重篤な症状を来すのは稀です。

(5)その他の輸血用血液製剤の副作用

アレルギー反応を伴わない低血圧反応、輸血開始数時間以内に発生する輸血関連急性肺障害(TRALI)、抗HLA抗体等による血小板輸血不応状態などの副作用が起こる可能性があります。

(6)その他の血漿分画製剤の副作用

グロブリン製剤で肝機能障害、無菌性髄膜炎、急性腎不全を起こす可能性があります。

2.輸血前後の検査について

輸血用血液製剤によるウイルス感染症の有無を調べるため、当院では輸血前及び輸血施行より3ヶ月後にB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エイズウイルス(HIV)の検査を行わせていただいております。前述のようにウイルス感染の副作用につきましては現在のところ完全に防ぐことは不可能であり、それに対し平成16年4月1日より生物由来製品感染等被害救済制度が創設されており、医療費・医療手当、障害年金及び遺族年金等の救済給付を行われるようになりました。輸血用血液製剤によるウイルス感染症の早期発見治療とこのような制度の活用のため検査をさせていただきたいと考えております。特にHIV検査につきましては検査について同意をいただかなければできない検査ですので、ご理解をいただき検査に同意いただけますようお願いいたします。

3.使用記録の保管及び情報の提供について

輸血用血液製剤及び血漿分画製剤の使用同意書ならびに受血者氏名、住所、使用した製剤の名称・用量・製造番号及び使用日等を記載した使用記録を20年間保管いたします。またこれらの製剤の製造販売業者からの要請に基づき、保健衛生上の危害の発生又は拡大の防止に必要と認められる場合であって、受血者等の利益になるときに限り、この使用記録を製造販売業者に提供することがあります。

患者様の治療において使用を考えております輸血用血液製剤を含む医薬品は、特定生物由来製品に指定されています。特定生物由来製品については、患者様に、①当該製品を使用する必要があること、②当該製品の原料・材料に由来する感染症のリスクを完全に否定できないこと、③当院において当該製品を使用した患者様の氏名などを記録し保存すること、④必要な場合はその記録を製造会社に提供することがあることを説明し、ご理解いただき、同意の上で使用することになります。

ご不明な点があれば遠慮なくご質問いただき、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

市立川西病院輸血療法委員会

ガイドライン